東京高等裁判所 昭和28年(う)156号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
(判旨)刑法第四十五条前段の併合罪を 構成する各個の犯罪が各別に起訴されて各別に訴訟が進行した場合、裁判所は、必ずしもこれを併合して審理するを要するものではなく、ことに右各事件が第一審と上訴審とに別れて係属する場合、第一審裁判所が両者を併合して審判することは、訴訟法上不可能なことである。
記録を検すれば、被告人に対する所論別件の麻薬取締法違反被告事件は、本件の原審第一回公判当時はもとより、本件の起訴前既に控訴審に係属し、原審における本件の審理中に更に上告審に係属するに至つたものであるが、本件の原審第四回公判期日において、原審弁護人は、最高裁判所へ上告中の右別件が本件とは刑法第四十五条前段の併合罪の関係にあるから、両者を併せて一個の主文で判決されたいとの趣旨の発言をしていることが認められるが、このように原審弁護人の求めるところは、訴訟法上実現し得ないところであるから、原裁判所がかかる申請を容れないで本件のみの審判をしたことは当然であつて、所論のように法令に違反するものではない。
論旨に援用する昭和十七年十一月十九日の大審院判決は、裁判所構成法戦時特例施行当当時二審制事件たる窃盜の事件と三審制事件たる詐欺の事件とが同時に第一審たる区裁判所に係属審理されている場合に、両者が刑法第四十五条前段の併合罪であるときは、同裁判所は上訴手続の差異を慮つてことさらこれを分離して審判するを要するものではなく、同時に審判して刑法第四十七条を適用し、一個の刑を科し得るとしたものであり、また同様援用の昭和二十五年十一月二十一日の最高裁判所判決は、刑法第四十七条は刑法自体に規定する罪に対してのみならず、特にこれを除外する規定がない限り、他のすべての刑罰法規違反の罪に対して適用さるべきものであるから、同法条は、麻薬取締規則違反にも適用があるとしたものであつて、いずれも何ら本件の論旨に適うものではない。論旨は、理由がない。